青函トンネルは1961年(昭和36年)に着工され、今から35年前の1987年(昭和62年)11月 実に26年の歳月と34名の犠牲者をかけて完成しました。
全長は53.85 kmで、完成当時は世界最長でした。(現在はスイスのゴッタルドベーストンネルで57km)
最近、日本の九州と韓国(朝鮮半島)を結ぶ日韓トンネルの話が持ち上がっていますが、その長さは300kmもあり、青函トンネルの難工事を思うと、どう考えても実現可能な話とは思えませんね。
青函トンネル建設の際にはこの場所が本州側の基地として重要な役割を果たしました。
青函トンネル記念館はこの場所にあります。
駐車場はこんな感じ。
記念館に向かって歩きます。
入口に近づいてきたぞ。
目次
1 坑道
正面の建物が青函トンネルの坑道の発着駅で、右に丸い糸車のようなものがありますが、地下坑道へ向かうケーブルカーが動いている時はこの糸車が回転します。
チケットを買ってケーブルカー乗り場に向かいます。
坑道の案内時間は45分で完全ガイド付きです。
ケーブルカーは定期便が50分間隔で動いており、沢山の観光客が訪問しているのが分かります。繁忙期には25分間隔になるのでしょうね。
橙色のケーブルカーに乗っていざ出発。
8分で体験坑道駅にたどりつきます。
青函トンネル記念館から778mって、随分移動しました。
いざ坑道へ。
吉岡は北海道側の保線基地です。
坑道は暑い夏でもひんやり。
津軽海峡に棲む魚が水槽に入れられています。
ということは、ここの湧水は海水? 海底だから当たり前か。
体験坑道のパネルは記念館と重複していますので、写真は記念館のものをご覧ください。
作業員がトロッコに乗り込む様子が展示されています。
これは蓄電池機関車。
今ならリチウムイオン電池を使ったEVが流行りですが、当時は鉛蓄電池しかなかったはずなので、大きな電池を使って運航していたのでしょう。
地下の密閉空間で石炭やガソリンを燃やすことができなかったので仕方がないですね。
土砂を動かす小型のブルドーザー
削岩機
先端にノミをつけて、圧縮空気の力で衝撃を与えて、ダイナマイトを装填する孔を削る機械。
小型特殊さく孔機
先進ボーリング、水抜きボーリングなど多目的に使用されていました。
グラウトミキサー(左)
セメントと水を混ぜ合わせて、短時間でグラウト(注入材)を作る。
グラウトポンプ(右)
注入管の中にグラウトを圧力をかけて送り出す。
吹付コンクリート
トンネルの壁の岩盤が崩れるのを防ぎ、地盤を なるべく早く安定させるために、掘削後すぐにコンクリートを吹きつける画期的な方法。
コンクリートを吹き付けている様子
この先に本坑があります。
ツアーが終わると坑道(ケーブルカー)の入口は締まります。
体験証明書を発行いただきました。
2 青函トンネル記念館
坑道探検のあとには記念館の見学です。
」
入口にある削岩機を使う作業員です。
国定点——トンネル内の防災拠点
定点は、世界初の海底駅でもあり、本州側竜飛、北海道側吉岡にあるトンネル内に設けられた防災拠点です。万一火災が発生した場合、列車はこの地点で停車し、乗客は連絡誘導路を通って、 安全な待避所(1,000人収容)に避難することができます。また定点にはスプリンクラーや消火栓が備えられ、列車はここで消火されます。その他、情報連絡設備や監視用テレビなどを設置しています。
海底トンネルの工事は、陸上のトンネルに比べて困難を伴います。 海水が流れ込んできたら全滅してしまうからです。そのため工事に先立って、昭和21年から念入りな調査が始まりました。 海上からはトンネルの位置や長さを決める測量が行われました。 これによって一番条件のいい西側の23キロメートルのルートを選ぶことが決定しました。その後はトンネル部の海底の地形や地質を調べることに努力しました。
10数年にわたる調査の後、いよいよ昭和39年に工事がスタートしました。 しかし、海上調査や海底の土の採取だけでは情報不足です。 そこで、工事開始後も海底のボーリング (掘ること)を中心に調査が続けられました。
先進ボーリング
実際のトンネルをつくる前に、その脇に調査用のトンネルを水平に掘っていきます。 先に断層や水の浸入の具合を知って万が一の事故を防ぎます。
初期地質図完成 海上調査や岩石採取調査が終わると、調査結果をまとめて海底地質図をつくります。 地層の縦断面図、 上から見たときの平面図の2枚を作成し、 これをもとにトンネル工事をすすめます。 この初期地質図は、 実際に工事をすすめてから作成した地質図とほとんど差異がありません。 いかに調査が綿密であったか、よくわかるでしょう。
青函トンネルが貫く地層
青函トンネルが通る津軽海峡西側の一帯には、グリーンタフと呼ばれる緑色の凝灰岩が厚く分布しています。そして、さらに詳しく言えば、5つの部分に分かれています。 火山岩主体の本州側陸底部、 本州側海底部の火山岩が貫入している訓縫層、 海底中央部の八雲層及び黒松内層、 北海道側海底部の訓縫層部分、そして北海道側陸底部の八雲層及び黒松内層の部分です。 各部分の性質が違う上に貫入や割れ目、断層が多いため、工事は苦難を強いられました。
トンネル工事は本坑工事の前に、まず調査用のトンネルを掘ることから始めました。 地上から海底に向けて斜め下へ深く掘り下げて、 1,300メートルもの調査斜坑をつくります。 しかし、竜飛の陸底部の地層はさまざまな岩脈が入り組んで、きれつや断層も多いのです。 海底部に届く800メートル地点からは海水と同じような成分の水が混入してきました。
調査斜坑の出水
斜坑工事は1,223メートル地点で大きな断層にぶつかり、 出水事故に見舞われました。 ポンプで排水してもなかなか追いつかず、もはや水没かと思われたほどで、 排水には大いに苦労しました。 この事故の結果から本トンネルは計画より東側に移して、条件の悪い地層を避けることとなりました。
作業坑の出水
調査坑が掘り終わると、 先進導坑、 次いで作業坑を掘りはじめました。 本州側の海底部は、火山岩がそのまま固まった火成岩で、 硬いけれど亀裂が多く、そのため湧水も多い地層でした。
昭和49年12月5日、 竜飛作業坑の3,690メートル地点で出水事故が起き、 毎分6トンもの湧水で130メートルにわたりトンネルが水没。 それで直進のルートを断念しう回することで工事が再開されたのはほぼ半年後でした。
本州側海底部は訓縫層という地層です。 これ自体はグリーンタフに褐色の泥岩がところどころ混じった、比較的掘りやすい地層です。 しかし、本州側海底部には断層や火出岩の貫入が多いため、 圧力や熱水作用によって変質して、崩れやすくなっているところもあります。 このため、 トンネル工法も岩質に合わせ2、3種類を使い分けました。
いよいよ竜飛側と吉岡側の工事がまん中で出会うときが来ました。 貫通点は砂質泥岩が主体の黒松内層のため、固めるための注入に苦労しましたが、この難関も突破。 調査開始から40年を経て、 ようやく夢が現実になりました。
吉岡工区が湧水の多い八雲層に四苦八苦してやっと突破したあとには、 最後の難関が待っていました。 海峡中央部の黒松内層はルーズな砂層で、このまま掘り進むとまた湧水や崩壊を起こす可能性が出てきたのです。 そこで用心のために掘削をストップし、先進ボーリング、 注入、 吹付コンクリートの技術で地層を十分に固め補強しました。
最大の出水事故は昭和51年5月6日、 吉岡作業坑4588メートルで発生しました。 毎分85トンで押し寄せる水をせき止めるために、 全力をあげて防水堤をつくっても破られ、作業坑は3キロメートルにわたって浸水。 あわや水没かと思われました。
やむなく水を本トンネルに流し、必死の排水作業で排出。 その後、 作業坑は出水地点を右へう回して再開されました。
■坑内測量
工事開始後はトンネル内部の測量も毎日行われました。高さや幅をはかるほか、特に掘り進む際の方向を決める測量にも力を注ぎました。 トンネル工事は本州・北海道の両端から始まり、海底で完了するため、方向を間違うと貫通できなくなってしまうからです。工事と並行しながらの測量は大変でしたが、レーザー光線を利用して精度を保ちました。
光波による距離測定器
光波による距離測定に使用されたプリズム
■渡海水準測量
トンネルを掘り進む場合、水面からの高さを保持することが重要です。
そのため本州側と北海道側両方の陸地を結んで高低差をはかり、トンネルの深さを決める基準をつくりました。
この渡海水準測量は昭和45年から57年までに合計5回実施されました。
光の屈折による誤差を防ぐために、同じ測量を昼と夜に分けて行われました。
■渡海三角測量
海底トンネルをつくるには、トンネルの位置やその長さを正確につかんでおく必要があります。そこで昭和40年に国土地理院による高精度な渡海測量が行われました。
本州側の津軽半島と北海道側の渡島半島の両方に各3ヶ所の基準点を設けます。
そして各地点からの測量をして正確な長さを算出しました。
59年までに合計12回観測しました。
地図上の赤い線が渡海三角測量網です。
どれだけ科学が進歩しようと、測量の基本はピタゴラスの定理のように見えます。
記念館の入口のポスターは今は無き、高倉健さん。
本州側のトンネルの入り口付近の写真です。
奥に新幹線の軌道の壁が見えます。
前回、竜飛岬に立ち寄った時は坑道には入らなかったので、今回入坑できて満足しています。
海水が坑内に出てきて大変なことになっていた当時のニュースは覚えがありますが、現場の作業者の必死の苦労が伝わる展示でした。
坑道は北海道側にもあるとのことなので、今度はそちらから潜ってみようかと思います。