電子回路

電子部品の使い方 -コイル、トランス-

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コイルは銅線をくるくると銅線を軟質の磁性材料(電流が流れたときだけ磁石になる素材)に巻いたものです。

電流が流れると、その変化に伴ってコイルから磁力線が発生し、それが磁性体を通過することによって、以下の式で表す起電力が発生します。Lはインダクタンスです。

V=-L ・di/dt

1. チョークコイル

磁性体に銅線を巻けば、これが立派?なチョークコイルとなります。
チョークってchoke(首を絞める)と言う意味で、電流の流れを制限する機能があります。
サイズは、豆粒ほどの小さなものから、サッカーボールほどの大きなものまで千差万別です。
コアになる磁性体の材料によって特性が異なってきます。コイルで発生する磁束の通りやすさを数値で示したものを透磁率と言いますが、この透磁率が高いほど、小型で高インダクタンスのコイルができます。
下の表には、代表的な磁性体(空気は参考です)の透磁率を記載しましたが、それぞれ得意とする周波数がありますので、用途に応じて使い分けています。
実装上の注意としては、コイルの「鳴き」「うなり」があります。電流の増減が激しいと、その変化に伴って、コアが変形し、音が発生します。実装時にコイルの極性(巻きはじめと終わりがあります)は、普通特に気にしませんが、こんなとき、小型のコイルであれば、極性をひっくり返したり、ボンドで固定したりすると音が止むことがあります。
大型のコイルについては電流波形を変えるか、防音遮蔽をするしか手がありません。

物質 透磁率 μ [H/m] 使用周波数
ケイ素鋼 5.0×10−3 200Hz程度
フェライト (マンガン亜鉛系) 8.0×10−4以上 100 kHz ~ 1 MHz
フェライト (ニッケル亜鉛系) 2.0×10−5 – 8.0×10−4 1 MHz ~ 100MHz
空気 1.25663753×10−6 ------

注意ポイント

コイルには電流定格がありますので、その定格値を上回って、電流を流した時は、コアが磁気飽和を起こして、コイルとしての性質がなくなります。オシロスコープで見ていると、ある電流値を境にして、電流が突然流れるようになります。まさに、チョークとしての機能が失われ、電流が堰を切ったように流れる様子が見て取れます。

2. コモンモードコイル

コモンモードコイルは上の絵の様に、2本の導線が1つのコアに“同じ向き”に巻かれています。 ●はコイルの巻き始め位置を表します。
それぞれのコイルは電流の往路側と復路側に接続されます。この時にコアに発生するそれぞれのコイルの磁束は逆向きになるため相殺されてチョークコイルとしての機能がなくなります。
つまり、正常に電流が流れている限り、無きに等しい部品ということになります。

ノーマルモードとコモンモードという定義がありますが、下の図で左がノーマルモード電流の流れです。回路を動作させた場合のメイン電流はノーマルモードの矢印に従って流れます。

他方、右に記載したコモンモード電流は、どちらかというと意図しないで流れる電流です。コモンモードコイルを介して、入力された電流は、コモンモードコイルに戻ってくるのが正常ですが、時として、入力された電流は、回路の別の経路をたどって出て行ってしまうことがあります。図には、回路からアースに抜ける浮遊容量を伝わって移動する電流を記載しています。
この様にして、コモンモードコイルを介さないで、とこかへ行ってしまう電流は、浮遊容量や、意図的に接続した小容量のコンデンサを介して流れるので、電流の周波数が高くなると抜けやすくなります。
回路にスイッチング電源とか、インバータなどの高周波成分のノイズ源になるようなブロックがある場合はこの経路が必ず発生します。
この電流を少なくするためにコモンモードコイルがあります。

ノーマルモードの場合は、それぞれのコイルに逆相の電流が流れるために、磁束が打ち消しあってコイルの意味をなさなくなりましたが、コモンモードの時はそれぞれのコイルに同相電流が流れるのでコイルとして機能します。そのため、コモンモード電流に対するインピーダンスがこのコイルのところで高くなって、結果的にコモンモード電流が少なくなるという訳です。

そんな訳で、このコモンモードコイルはノイズ対策で重宝されます。

 

3. リアクター

チョークコイルの一種ですが、リアクターは力率改善に用いられるコイルです。
商用電源を使って制御回路の電源を構成するときに、正弦波の商用電源は、ダイオードブリッジで整流されて、大きなコンデンサに充電されますが、電流が流れる時間は、正弦波のピーク近くに集中し、電圧の立ち上がり、立下りの時間は、全く電流が流れません。

電子回路を搭載したほとんどの機器の電源がそのように流れます。この時、機器に交流のモータや、ヒータがあって、そちらに大半の電流が流れる場合は問題になりません。

しかし、最近の家電機器はインバータで制御されるものが増えてきました。インバータ機器の場合は、制御電源だけでなく、モータの電源そのものも直流で動作するため、機器として電圧の立ち上がり、立下りの時間に、全く電流が流れなくなりました。この状態を力率の悪い状態と呼びます。

下記、力率の悪い状態を示す回路の、電源電圧(みどり)、電流(あお)を示す波形図です。

ここで、回路にリアクター(L1)を挿入した場合はどうなるでしょうか。先ほど、ピークにしか流れなかった電流はピーク以降に長時間流れるようになりました。この状態が力率改善された状態です。

力率が悪いと、電力会社がせっかく送電した電力が、末端で使用されずに、また、戻って行ってしまいます。そのために家庭で長時間使うインバータの代表機種のエアコンなどは、リアクターを使って力率改善をしています。

 

4. 電源トランス

電源トランスの基本は以下の図にしめすものです。巻線比で2次側の出力が決まります。
図は1次側から2次側へエネルギーが全て伝わる理想トランスと呼ばれるものです。
トランスには、1次側の定格と、2次側の定格が記載されています。
2次側の出力をつかって、制御回路の電源を作るとき2次側定格出力を頼りに回路設計すると大失敗します。定格出力は2次側に抵抗をつけたときの出力になります。実際には、前節のように、ダイオードブリッジを使った平滑回路を作ります。 そのときは力率は悪くなりますので定格出力の60~70%しか得られません。かつて、私も失敗しました。

V2=n×V1
I2= I1/n

5. コイル全般の注意事項

定格電流上限まで使用したらいけません。コイルの定格電流の上限はほぼ温度上昇によって決まっています。

定格まで使うと、かなり温度が高く(100℃近くまたは以上)なるので、周辺の部品が耐えられなくなります。

特に、プリント基板に実装した場合は、基板の耐熱温度を超えてしまいます。

かって、コモンモードコイルを定格近くまで使用した時に発熱が問題になり、結局、使用温度が高い時に機器の出力を落とさなくてはならない羽目に陥ったことがあります。ディレーティングの目安は80%です。

他にも、

電子部品の使い方 --抵抗器--」、「電子部品の使い方 -コンデンサ-」がありますのでご覧ください。

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