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静嘉堂文庫美術館の企画展「平安文学いとをかし」@源氏物語

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静嘉堂文庫美術館の企画展「平安文学いとをかし」は、平安時代の文学と美術をテーマにした展覧会です。

この展覧会では、国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」や「倭漢朗詠抄 太田切」など、平安時代から江戸時代にかけての貴重な絵画や書物が展示されています。

特に、俵屋宗達の「源氏物語関屋澪標図屏風」は、その美しい描写と歴史的価値から注目されています。

また、平安時代の文学作品である「源氏物語」や「住吉物語」を題材にした絵巻物も展示されており、これらの作品を通じて平安時代の文化や美意識を感じることができます。

さらに、現代作家によるガラス工芸作品も展示されており、古典と現代の美術が融合した展示内容となっています。

展覧会は2024年11月16日から2025年1月13日まで開催されました。

1        源氏物語関屋澪標図屏風(げんじものがたりせきやみおつくしずびょうぶ)

こちらはレプリカです。

俵屋宗達による源氏絵の傑作

源氏物語関屋澪標図屏風(げんじものがたりせきやみおつくしずびょうぶ)

俵屋宗達 ( ? ~ 1642以前)

江戸時代 寛永8年(1631)

紙本金地着色 六曲一双 国宝

 

「関屋」 と 「澪標」の場面を各隻に描いた作品。

両図ともに光源氏と女君の出会いの場面です。

主人公の姿を明確には描かず、 牛車(ぎっしゃ)と舟という乗り物で暗示しています。

「関屋」の山や「澪標」の太鼓橋と浜松など、 意匠的な造形表現を大胆に配した画面構成に宗達の優れた感性が表れています。

宗達画の魅力を存分に伝える傑作です。

 

第十四帖 「澪標」

光源氏は、 内大臣に昇進した年の秋、 様々な願いがかなったことの願ほどき (お礼参り) のために住吉社へ詣でた。 おびただしい数の廷臣(ていしん)が供奉(ぐぶ)する厳めしい行列であった。

偶然、同じ時に明石の君も海路で住吉参詣に訪れていた。

岸に着いた明石の君が 「どなたの参詣でしょう」と行列の人々に尋ねると、「今をときめく内大臣殿 (光源氏) の住吉詣を知らない人がいるのか」と皆が誇らしそうに笑う。

明石の君は、光源氏一行の盛大な行列の様子を見て我が身との身分差を痛感し、参詣せずに引き返した。

明石の君は、光源氏の明石時代の愛人です。

第十六帖 「関屋」

「関屋」は、関所に置かれた建物を言う普通名詞ですが、それと同時に「逢坂の関」の建物を指す固有名詞として使用され、関そのものも意味しました。

『源氏物語』でも固有名詞の用法になります。

願果しに石山詣でに出掛ける光源氏一行と、常陸国から上京してきた空蝉一行が、逢坂の関で偶然にすれ違ったことを描いています。

空蝉は、光源氏が訪れた家の主婦(当時17歳)であり、彼女の美しさと知性に惹かれます。しかし、空蝉は既婚者であり、光源氏の求愛を拒みます。光源氏は彼女の心を得るために様々な手段を試みますが、最終的には彼女の強い意志により、恋は成就しません。

こちらは本物。

 

2        紫式部図

そうだ、『源氏物語』を書こう

紫式部図

土佐光起 (1617~91) 江戸時代 17世紀

絹本着色 一幅

紫式部は石山寺で琵琶湖に映る月を見て、『源氏物語』 を書き始めたという伝承があります。

本作はこの伝承を踏まえた作で、墨の隈取りで表した月と文机に肘をつき手に筆をとる紫式部の姿を描いています。

謹直な線による面貌の描写や垂髪(すいはつ) 装束の緻密な表現には、 細密描写を得意とした光起の手腕が遺憾なく発揮されています。

3        源氏物語図屏風

活き活きとした人物描写が見どころ

源氏物語図屏風

住吉具慶(すみよし ぐ けい) (1631~1705) 江戸時代 17世紀

紙本着色 六曲一双

右隻に「若紫」「菜摘花」「葵」、 左隻に「薄標」「薄雲」「少女」 の計6場面を描いた小型の屏風です。

右から左へ四季がうつろっています。

「薄雲」で愛らしいしぐさを示す明石の姫君や、「少女」で童女の身だしなみを整える人々を描くのは他の源氏絵に例がなく、 具慶独自の表現です。

具慶の法橋時代(1674~91) の作。

右隻

第五帖 「若紫」

北山での病の療養を終えた光源氏は、源氏を迎えに来た公達らとともに、 美しい桜の木の下で小宴を催す。

 

第六帖 「末摘花」

光源氏は、末摘花邸に忍んでいた頭中将とばったり出くわす。

2人はそのまま牛車に同乗し、 笛を吹きながら左大臣邸に向かう。

 

第九帖 「葵」

光源氏は紫の君と葵祭の物見に出ようとする。

紫の君の髪が伸びたことに気がついた源氏は、手ずからその髪の裾を切りそろえる。

左隻

第十四帖 「澪標」

光源氏は、 願ほどきのため住吉社に参詣する。

偶然船で参詣に訪れていた明石の君は、源氏の行列の華美な様子に身分差を感じ引き返す。

 

第十九帖 「薄雲」

明石の君は光源氏との間に生まれた幼い姫君と須磨から大堰(おおい)の山荘に移る。

雪の日、明石の君と姫の乳母は行く末を案じた和歌を詠み交わす。

 

第二十一帖 「少女」

光源氏は、五節(ごせち)の舞姫を務める惟光(これみつ)の娘の介添の童女を選び出すため、 少女たちを二条院に集め、 童女御覧(わらわごらん)の予行演習をさせる。

 

4        源氏物語古系図

『源氏物語』の登場人物の系図

源氏物語古系図

伝 二条為親 ( ? ~ 1341) 写

鎌倉時代 正慶元年(1332)

紙本墨書 一巻

長大な 『源氏物語』 の理解を助けるための系図の作成は、平安時代末期頃にはじまったと考えられています。 三条西実隆(さんじょうにしさめたか)が編纂した系図を新系図、それ以前のものを古系図と呼びます。

巻末の目録には「のりのし」「すもり」「さくら人」 「ひばりこ」など、 現在の「源氏物語」にはない巻名が挙げられています。

 

5        源氏物語

源氏学の家の 「源氏物語」

源氏物語

中院通勝 (1556~1610) ほか写

江戸時代 慶長13年(1608)

紙本墨書 全五十四冊のうち

室町後期の公家・三条西実隆(さんじょうにしさねたか)が享禄4年(1531)に写した『源氏物語』の証本を、 実隆の曾孫にあたる中院通勝が中心となって書写・校合(きょうごう)した写本です。

通勝は『源氏物語』の注釈書 『岷江入楚(みんごうにっそ)』の著者として著名です。

金銀泥によるおおらかな描写の表紙絵は、同時代の連歌懐紙(れんがかいし)などの料紙(りょうし)下絵に通じる趣があります。

 

6        紫式部日記

紫式部日記

作者:紫式部(生没年不詳) 成立 : 11世紀初頭

中宮彰子に出仕した紫式部による宮仕えの回顧

録。

寛弘5年(1008) 秋から寛弘7年正月までの出来事を記録した日記文と女房たちの批評を記した消息文で構成されます。

『源氏物語』 に関する記事が複数登場し、本日記によって『源氏物語』が紫式部の作と判明します。

7        源氏物語蒔絵源氏箪笥(げんじものがたりえまきげんじたんす)

嫁入道具と言えば「源氏」でしょ

源氏物語蒔絵源氏箪笥(げんじものがたりえまきげんじたんす)

江戸時代 18~19世紀

木製漆塗

「源氏物語」 全54冊の冊子を納めた蒔絵箪笥です。

内側に三段六個の抽斗(ひきだし)を収め、外側には「若紫」 「初音」 「夕霧」などの場面を配し、 葵紋と梅鉢紋(うめばちもん)が散らされています。

蒔絵は梨地(なしじ)に高蒔絵(たかまきえ)、金貝(かながい)、 付描(つけがき)を多用し、豪華かつ入念な作行を示しています。

8       源氏絵詞(げんじえことば)

丁寧に写しとりました

源氏絵詞(げんじえことば)

伝 土佐光成 (1646~1710 )

江戸時代 17~18世紀

紙本墨画淡彩 一冊

色紙に描かれた源氏絵を冊子に写し取った作品です。

詞・絵ともに54帖分を収めています。

絵にはミス(御簾) カウシ (格子)、 フセン(浮線綾) のように、 装束の文様や建具についての注記があります。

土佐派の画風を示しており、 光起の子である土佐光成筆と伝わる作品が本作の祖本であったとみられます。

9      色絵源氏香透冠形香炉(いろげんじこう すかし かんむりがたこうろ)

雅(みやびやか)やかな京焼の香炉

江戸時代 18世紀

陶器 一口

 

纓(えい)と呼ばれる羽状の飾りをもつ冠を象った香炉。

色絵源氏香透冠形香炉(いろげんじこう すかし かんむりがたこうろ)

爽やかな青、緑と金の上絵具によって牡丹唐草

と紗綾形(さやがた)文様が描かれ、背面には源氏香図のうち 「花散里」の図が透かし彫りされています。

源氏香は5種類の香を5包ずつ用意して、 5包を選んで順に聞き、 香りの異同を答える遊び。

それを示した図案が源氏香図で、 『源氏物語』の中の52帖の巻名が当てはめられています。

 

 

10        倭漢朗詠抄(わかん ろう えいしょう)

これぞ平安貴族の美意識

倭漢朗詠抄(わかん ろう えいしょう) 太田切(おおたぎれ)

平安時代 11世紀

彩箋墨書 全二巻のうち  国宝

藤原公往(きんとう)撰 『和漢朗詠集』 を書写した作で、掛川藩主・太田家に伝来したことから「太田切」と称されます。

北宋からもたらされた唐紙に日本において金銀泥で花鳥や草木の下絵を描き加えた料紙を用いています。

「日本の下絵と中国の紙」「和歌と漢詩」 「仮名と漢字」と和漢の対比の妙を示す本作は、調度手本を代表する作品のひとつです。

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