哲学堂公園は明治37年に哲学者で東洋大学の創立者、井上円了が、ソクラテス、カント、孔子、釈迦を祀った「四聖堂」を建設したのが、はじまりです。
井上円了の没後、遺志により東京都に寄贈されました。
円了は東京大学の1期生です。当時は、唯一あった哲学科に進んだと、説明員のお兄さんから聞きました。
公園内の主要な建物は1904年~1912年に建設されたもので、現在も当時のまま公園内にあります。
春と秋には建築物の内部も一般に公開されます。
今回は秋の一般公開に合わせて見学に行って来ました。
場所 東京都中野区松が丘1-34-28
https://www.tetsugakudo.jp/access.html
入口の門はこんな感じです。
「哲學開」「眞理界」と言うこの言葉が、哲学へいざなってくれそうです。
目次
1 時空岡(じくうこう)
1.1 哲理門(てつりもん)
先ほどの門を入って左に曲がると時空岡入口の哲理門(別名 妖怪門)があります。
哲理門の左には女の幽霊、右には天狗の像が安置されています。
以前の写真では、塗装が落ち、その古さでおどろおどろしかったのですが、行った時は、どちらも塗りなおされ、色鮮やかで怖さ半減でした。
井上円了は「妖怪学」の創始者で、「妖怪博士」「お化け博士」などと呼ばれていました。
人々が日常生活の中で体験する妖怪(不思議な事)を客観的・論理的見地によって解明することで、迷信や思いこみ、偏見に捕らわれた人々の心を開放し、「自ら考える」ことの大切さを説きました。
門をくぐると、時空岡の建物群があります。
1.2 六賢臺(ろっけんだい)
哲学堂公園の象徴的な建物です。
日本の聖徳太子・菅原道真、中国の荘子・朱子、インドの龍樹(りゅうじゅ)・迦毘羅(カピラ)を祀っています。
いつもなら中へ入れるのですが、今回はコロナの影響で見学できませんでした。
左に見えるのが四聖堂、右が六賢臺です。
1.3 髑髏庵(どくろあん)
哲理門とは別の入り口、常識門の手前にあります。
おどろおどろしい名前の建物ですが、単なる休憩所です。
ここで俗心を清めてから哲学的な心を持って園内を見学とのことです。
閉鎖中のため、中は見られず。
1.4 常識門(じょうしきもん)
1.5 無尽蔵(むじんぞう)
井上円了が蒐集した品々を展示している建物で、博物館の機能を担っています。
変わったものが展示されています。
幽霊の写真だけを撮ってきました。
1.6 四聖堂(しせいどう)
東洋哲学から孔子、釈迦、西洋哲学から古代西洋のソクラテス、近世西洋のカントが哲学者四聖として祀られています。
堂の中には釈迦涅槃像が安置されています。
1.7 宇宙館(うちゅうかん)
お堂の中は聖徳太子像が安置されています。講義堂で、ここで宇宙の真理を研究する哲学を学ぶのだそうです。
宇宙館の屋根の上には烏帽子瓦が載せてあります。
2代目の烏帽子瓦は髑髏庵の庭に展示されています。現在は3代目。
1.8 絶對城(ぜったいじょう)
図書館です。
本を読むことは絶対の妙境(芸術・技芸などのきわめてすぐれた境地)に到達する道程なのだそうです。
四聖が刻画された「聖哲碑」の前に孔子の像も安置されています。
2階から撮影した写真です。なかなか厳かな気分にさせてくれます。
1.9 理外門(りがいもん)
裏門です。
と言っても門らしきものは石碑だけです。
哲学を極めた後には、必ず理外の理(普通の道理や常識では説明のできない、不思議な道理)があることを知るのだそうです。
1.10 理想橋(りそうきょう)
悟りを開いて去ってゆく橋でしょうか。
1.11 三學亭(さんがくてい)
日本古来の神道、儒教、仏教の中から最も著述の多い三人を祀った建物で、神道は平田篤胤、儒教は林羅山、仏教は釈凝然(しゃくぎょうねん 鎌倉時代後期の東大寺の学僧)を選んでいます。
1.12 硯塚(すずりづか)
硯供養のための記念碑。
1.13 筆塚(ふでづか)
筆養のための記念碑です。
2 唯心庭(ゆいしんてい)
後に出でくる唯物園と対になっている庭です。
哲学で言う、唯心論と唯物論の定義は以下です。
唯心論(ゆいしんろん、英: Spiritualism)とは、人間・社会において、心、もしくはその働きこそ至上の要因であるとする存在論における立場の一つ。 その反対が、唯物論になる。
唯物論(ゆいぶつろん、英: Materialism)とは、 観念や精神、心などの根底には物質があると考え、それを重視する考え方。
字のごとく、それぞれ心と物を重視する考え方です。
2.1 主観亭(しゅかんてい)
見た通りで、休憩所です。
2.2 概念橋(がいねんきょう)
「理性に達する道程には概念が存する」どういうこと?
2.3 鬼燈(きとう)
唯物園にある狸燈と対になっている燈籠。
人の心中に宿る鬼にも良心の光明は存するとのことです。
2.4 先天泉(せんてんせん)
教育や経験を超越した高砂尊厳の消息に接することがあるのを、この泉に例える????
2.5 心字池(しんじいけ)
「心」の草書体をかたどってつくられた池です。禅宗の影響を受けた日本庭園の伝統的な造りです。
東京大学本郷キャンパス内にある三四郎池が有名ですが、今まで行ったところでは日比谷公園の池があります。
2.6 直覚径(ちょっかくけい)
唯心庭から時空岡への近道です。
2.7 懐疑巷(かいぎこう)
唯物園と唯心園の境の場所です。
3 唯物園(ゆいぶつえん)
3.1 二元衢(にげんく)
「唯物園と唯心庭の岐路で二元もまた物心二者対立の名称である。」と理解できないことばで書いてありますが、「衢」とは、分かれ道、唯物園と唯心庭の堺だということでしょうか。
3.2 独断峡(どくだんきょう)
石垣です。子供であったらこの石垣を登っていたでしょう。
3.3 狸燈(りとう)
人の心情には狸に類するものがあるとのこと。
う~ん、狸の方が純粋な気がしますがね。
3.4 神秘洞(しんぴどう)
「進化の根源は極めつくせば神秘に帰する」って、結局、分からないって言ってるだけじゃないの。
3.5 三祖苑(さんそえん)
三祖碑には、中国の黄帝、インドのアクシャパーダ、ギリシャのターレス、が刻まれています。
それぞれ下記の祖のようです。
黄帝:日本のユンケル黄帝液は、東洋医学発祥を記してこの黄帝から名付けられているようです。
アクシャパーダ:インド六派哲学の一つであるニヤーヤ学派の開祖。
ターレス:古代ギリシャの記録に残る最古の(自然)哲学者
看板の説明書きが難しくて、よくわかりませんでしたが、哲学に何となく触れたような気がしました。
ちなみに 以前、読んだ西田幾多郎のベストセラー「善の研究」は少しも分かりませんでした。