赤外線発光ダイオード発光時の電圧降下(アノード-カソード間の電圧)は、可視光LEDの電圧より小さいです。
発光ダイオード(LED)を点灯するときの基本的回路は以下です。
図 1 LEDの点灯回路
順電流Iは、LEDの順方向電圧Vfとすると
I=(V-Vf)/ R
で求められます。
可視光LEDのVfは、青色のLEDが発明されるまでは長く2Vで計算していました。
しかし、青色LEDが発明されてから、青と白のVfは3V、その他は2Vで計算しています。
ではLEDのVfは2Vなのか、3Vなのか、そんなに単純なものなのでしょうか。
実は、発光ダイオードの順方向電圧(Vf)は、発光色によって異なっています。
ロームのカタログでφ3の砲弾型LEDの発光色とVfを拾ってみました。
表 1 ローム製各種LEDの順方向電圧
LED形名 | 色 | TYP順方向電圧(V) | 順方向電流(mA) | 波長(nm) |
SIR-341ST3F | 赤外 | 1.3 | 50 | 940 |
SLR-343VC | 赤 | 2 | 10 | 650 |
SLR-343DC | 橙 | 2 | 10 | 610 |
SLR-343YC | 黄 | 2.1 | 10 | 585 |
SLR-343MC | 黄緑 | 2.1 | 10 | 563 |
SLR-343PC | 緑 | 2.1 | 10 | 555 |
SLR343EC4T | 青緑 | 3.2 | 20 | 525 |
SLR343BCT | 青 | 3.3 | 20 | 470 |
光の発長が短くなるにつれて、Vfが大きくなっているようです。
よく見ると今までVf=2Vと単純に覚えていた赤、橙、黄、緑のLEDのVfも微妙に違います。
このVfの違いは発光原理を理解すると分かりやすいです。
図 2を使って説明します。
LEDはp型半導体とn型半導体つなぎ合わせたpn接合と呼ばれる構造で作られています。
発光はこの中で電子の持つエネルギーを直接、光エネルギーに変換することで行われます。
電極から半導体に注入された電子と正孔は異なったエネルギー帯(伝導帯と価電子帯)を流れ、pn接合部付近にて禁制帯を越えて再結合します。
図 2 LEDの発光原理
再結合時に、バンドギャップ(禁制帯幅)にほぼ相当するエネルギーが光として放出されます。
図 3に示すように、放出される光の波長は材料のバンドギャップによって決まります。
可視光の場合は、バンドギャップが大きいと波長の短い光(青色側)が、小さいと、波長の長い光(赤色側)が放出されます。
図 3 禁制帯幅と発光色 (ファイバーラボ株式会社H/Pから)
このバンドギャップは順方向電圧降下に相当します。
つまり、発光する色によって順方向電圧が決まってきます。
赤外線LEDは、波長が一番長く、バンドギャップ幅は小さくても良いので、Vfは他のLEDと比較して低くなります。
応用
以上の結果から、赤外であればリモコンでよく使う電池2本分の電源3Vを使ってLEDを直列に接続する図 4のような回路ができそうです。
リモコンで輝度アップや、広角照射を行う場合に使えそうです。
図 4 LEDの2直列接続回路