目次
1. 地磁気反転
子供の頃から、北は磁石のN極、南はS極が向く方向で、まさか地球の長い歴史の間に,地磁気のN極とS極が入れ替わる「地磁気逆転」が繰り返し発生しているなんて夢にも思いませんでした。
そんな常識破り?の事実を知ったのは2020年12月12日放送のNHK「ブラタモリ」。
「城崎・豊岡〜“影の主役”は玄武岩?〜」でした。
兵庫県・城崎温泉の近くにある玄武洞で1926年に現在の地磁気と逆向きに帯磁した岩石が存在することを京都帝国大学教授であった松山基範博士が発見したのです。
当時は放射年代測定法もなく、逆帯磁した岩石の年代を割り出すことは大変な作業だったようです。
地磁気逆転が報告された当時は,地磁気逆転が多くの科学者の注目を集めることはありませんでしたが、その後研究が進み60年代には正しいと受け入れられました。
後に、松山博士の業績を讚えて,約100~250万年前の逆磁極を主とする時期が松山逆磁極期(Matuyama reversed epoch)と命名されています。
逆転現象は20万年に一度の頻度で発生し、逆転期間は,数百年~数千年です。
逆転期間は地質学的時間スケールでは一瞬のできごとになるとのことです。
方位の反転に先立ち地磁気強度が現在の数分の1程度まで小さくなり,方位の反転が完了してから強度が回復します。
直近の地磁気反転は78万年前です。
逆転は,双極子磁場が180度回転するのではなく,双極子磁場成分が崩壊した後、逆向きに成長することによるとのことです。
2. 関連用語
3.1. 双極子磁場
棒磁石の絵で説明されますが、実際に棒磁石が埋まっている訳ではなく、どろどろのニッケルや鉄で構成されるコアの流れによって、磁界が生み出されています。
3.2. 地磁気の形
太陽風が常に地球に吹き付けているせいで、磁気圏は太陽側で押しつぶされている。
下図を見ると、磁気圏が太陽風や宇宙線(銀河や太陽から高速で地球に降り注ぐ「素粒子」)の侵入を防ぐバリアとして働いていることが分かります。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20201208/se1/00m/020/016000c
3.3. 磁気エスカーション
双極子磁場が通常の1/4程度まで弱まって、磁極の位置が自転軸から大きく外れる現象です。
3. 地磁気が反転する過渡期の影響
地磁気は,地球に降り注ぐ高エネルギー宇宙線や太陽風のシールドとなっているため,地磁気強度極小や地磁気エクスカーション(仮想的古地磁気極が大きく極からはずれる現象)は地球環境にも影響を及ぼしたと推定されます。
さてここから先は、小説「極性判定の日」伊予原新の小説の中から、地磁気反転に係る環境への影響を抜き出してみましょう。
この小説は、ある日、地磁気が減少しだし、反転し、回復する過程を1年程度の時間軸にして混乱する人々の様子を書いています。
実際の地磁気反転は数百年~数千年なので、過去に起こった地磁気反転では我々の祖先は、環境の変化を全く感じることなく人生を送っていったことでしょう。
著者・伊予原新は神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻した理系作家です。
この小説では、彼の知識を余すところなく駆使しています。
3.1. オーロラベルトの南下
太陽風としてやってきたプラズマ粒子は、地球の大気圏に入り込むと、磁力線に添って極地方の超高層大気に突入する。
それが大気中の原子や分子と衝突することで起こる発光現象がオーロラ。
磁気圏が縮小してゆくとオーロラの発生する緯度帯(オーロラベルト)が南下する。
小説では東京でオーロラが見えている。
3.2. 迷う動物
イルカ、クジラ、サケなどの回遊魚は地磁気を使って方向を検知している可能性がある。
地磁気が乱れると集団座礁を起こしやすい。
ミツバチは帰る巣を見失い、鳩も、レース中に太陽フレアが発生すると行方不明になりやすい。
ただし、これは短期間に地磁気が消失した場合で、数百年~数千年単位で変化する地磁気の変化に対しては動物は何らかの代替手段を取得するでしょう。
3.3. 氷河期
宇宙線は雲の凝結核を効率的に作り出すので、大気中に飛び込んでくる宇宙線が増えると、雲の量が増える。
雲は太陽光の反射率を上げるので、平均気温が下がり、氷河期が来る。
3.4. 新人類
地表に届く宇宙線がDNA細胞傷つけ、新しい種が生まれる。
4. その他
分杭峠
長野県伊那市と下伊那郡大鹿村との境界に位置する標高1,424 mの峠です。
日本最大、最長の巨大断層地帯である中央構造線の真上にあり、2つの地層がぶつかり合っているという理由から、エネルギーが凝縮しているゼロ磁場のパワースポットと呼ばれています。
しかし、この場所が実際に磁場ゼロの場所ではないようです。