「東京街歩き:井伊家上屋敷跡にある議事堂前公園」で、議事堂前公園にある日本水準原点の報告をしましたが、2022年4月9日のブラタモリで、この井伊家の上屋敷跡にある水準原点の話を詳しく説明していましたので、先のブログを補完したいと思います。
日本水準原点標庫の外観がこれです。
標庫? 初めて聞く言葉ですが、標準となる物を納めたものを言うみたいです。
で、建物の前の菊花紋章をあしらった黒い蓋を開くと下の感じです。
あれっ? これだけ?
以下、ブラタモリの映像の一部をお借りして説明して行きます。
扉の中の白い部分の中心を水平に走る線が水準原点で、現在の標高24.39mを示します。
この標高は東京湾の平均海面を海抜0mとしたときの高さです。
この基準原点を使って、どうやって標高を測るかと言うと、どうやら工事現場でよくやっているやつ見たいです。
必要な道具は「水準儀」と呼ばれる水平を測る機器
「標尺」と呼ばれる物差し
まずは、水準儀で、水準原点を合わせ、
標高を測りたい場所に立てた標尺の値を読み取ります。
その値が1.39mであれば、原点の標高24.39mから1.39mを引いて23mということになります。
2回目からは、標尺同士で、差分を取りながら標高を決めていきます。
最も高い精度で標高を求める(高低差を0.1mm)には、80mごとに測量しなければならないので、例えば、最寄りの水準点から8km離れた場所の標高を求めるには、水準測量を100回繰り返絵さなければなりません。
番組の中で、野口葵衣アナが、もっと簡単な方法はないのかと言っていましたが、現在は、人工衛星を利用する電子基準点を使った方法があります。
その電子基準点もこの標庫のすぐ近くにあります。
しかしながら、正確に測量しようとすると、現在でもこの方法なのだと言うことです。
下記が、国土地理院H/Pに掲載されている全体の分かるイラストです。
ここは国土地理院H/P
ところで、東京湾の平均海面はどこで計測しているのでしょうか。
神奈川県の油壺験潮場です。
場所は東京湾というより、相模湾なのですが、海面が安定して、誤差の少ない測定ができるようです。
番組では、標庫の裏側も開けています。
明治24年辛卯(かのとう)5月建設 陸地測量部
陸地測量部は、日本陸軍参謀本部の外局で国内外の地理、地形などの測量・管理等にあたった、現在の国土地理院の前身の一つである国家機関です。
銘板の下には以下の文字が刻印されています。
参謀総長は建設当時の有栖川宮熾仁親王 (ありすがわのみや・たるひとしんのう)
麻布にある有栖川記念公園に行くと、騎馬像が見られます。
参謀本部は、井伊家の上屋敷跡にありました。
明治時代でも、この場所は軍事上の重要な場所であったということです。
建物は下の絵葉書の写真で確認できます。
歴史を辿ると水準原点がなぜここにあるのかがわかりますね。
疑問は、油壷の海抜0mと水準原点の24.39mの高さをどうやって計測したかですが、やはり、水準儀と標尺を使って、油壷からこの水準原点標庫までつないで、やっと海抜が確認できたのでしょうか。
気に遠くなる作業ですね。