電子回路

LTspiceを使って設計:小信号トランジスタの増幅回路1

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トランジスタといえば、最初に習ったのは、信号の増幅機能ですが、現在開発の現場でトランジスタを使った増幅回路を設計することは、まれだと思います。

ほとんどの場合ON/OFFのスイッチング素子として使っているものが多いです。それはそれで、ベースにチョロっと電流を流し、コレクタ電流をドサッと流す増幅作用を応用したものなのですが、ここではひとつ自己バイアス回路と呼ばれる増幅回路の設計を回路シミュレータLTspiceを使って行ってみます。

1. 自己バイアス回路

hFE(直流電流増幅率)の変化でコレクタ電流が増加したとしても、R1、R3間の電圧が増加するので、トランジスタのC-Eの電圧が減少します。
その結果 ベース電流が低下し、コレクタ電流も減る。
といった電圧によるフィードバックが発生するため安定しています。
そのうえ、構成部品がすくなく単純です。
設計に当たって、計算は一切しません。
教科書には難しい式を使って設計方法を記載したものがありますが、現場で役に立ったことはありません。一生懸命計算してもたいていは、動作点が低くなってしまっていた気がします。
だいたいはトランジスタと複数の抵抗を持ってきて半田ゴテで付け替えながら動かしていました。しかし、現在は素子が小型化して簡単に半田ゴテで抵抗を付け替えることができなくなりました。そこで代替手段として回路シミュレータのLTspiceを活用します。ただし、開発手順は昔のままで半田ゴテの代わりがシミュレーションとなっただけです。

2. 動作点を決める

まずは、増幅回路の動作点を決めたいと思います。コレクタの電圧が入力信号の無い時に1/2Vccになるように設計します。今回はVccは5Vですので2.5V近傍を狙います。

トランジスタはロームの2SC4081を使います。

さて、3つの抵抗がありますが、R3は増幅にあまり大きな影響を与えない抵抗です。無くても良いのですが、電流が流れすぎたときにE電圧が上昇し、コレクタ電流が抑制されるので、安定した増幅が可能となります。とりあえず、R3=100Ωとします。

R2はベースに流れる電流を決める抵抗ですが、ベースの電流は少しでよいので1MΩとします。通常使用する抵抗の値は上限1MΩまでと考えてください。あまり大きすぎと流通量も少なくなりますし、プリント基板の抵抗の影響も無視できなくなります。

以上で2つの抵抗値が決まりましたので。R1の値を決めたいと思います。

LTspiceにはステップ解析という素晴らしい道具があります。現物設計では、異なる抵抗値の抵抗R1を付け替えながら、オシロスコープでその時の動作点電圧、すなわちトランジスタのコレクタ電圧を測定し、2.5Vになるような抵抗を選ぶのですが、複数のR1の値の結果を一発で計算してくれる方法が備わっています。これはステップ解析と呼ぶ方法を使います。

ステップ解析をするために、抵抗R1の素子値の定数を変数化します。抵抗R1を右クリックします。通常は”Value欄”に定数を入力しますが、今回は変数化するために{VR}と入力します。これで「VR」が変数となります。このように、定数を変数化するために、LTspiceでは変数には必ず中括弧{}で囲みます。

次に回路上でキーボードの”s”、またはツールバーの「.op」をクリックし、”Edit Text on the Schematic”を表示させ、”SPICE directive”にチェックがあることを確認してから、.stepコマンドを記入します。今回は”.step param VR 1k 10k 1k ”と記入しました。これは、変数VRを1kΩから10kΩまで1kΩ刻みで変化させるコマンドです。

結果は次の図です。100ms間の解析を行ったものです。青い線が電源電圧5Vのラインです。抵抗R1の値を1kから順番に+1kずつ増やしてゆくと、コレクタ電圧(みどり)が順番に下がってゆきます。各波形プロットには、抵抗値の注釈を付けました。

動作点の電圧2.5Vを狙うのであれば、4kと5kの間の抵抗を選ぶとよさそうです。そこで、E6シリーズの抵抗から4.7kを選択します。あまり小さくなりすぎず、ちょうどよさそうな抵抗値になりました。

E6シリーズについては(電子回路部品はE6系列をむねとすべし)を参考にしてくれださい。

3. 増幅回路を動かす

最終的に全ての抵抗値が決まったので、増幅回路を動かしてみましょう。入力する信号源は正弦波で0.05Vo-p(ピーク電圧値) 100Hzになります。

入力信号が0.05Vo-p に対して、出力3Vp-pですので、およそ30倍の増幅回路が出来上がりました。増幅器の性能を示す単位としてデシベルを使いますがこの場合
20×log(1.5/0.05) ≒ 30dB となります。

ところでR3に100Ωを接続しましたが、交流信号が100Ωを迂回するように並列にコンデンサC2を挿入すると下の図のように増幅率が上がります。出力は3.4Vp-pですので、34倍の増幅率となります。デシベル値では
20×log(1.7/0.05) ≒ 31dB となります。

ダイナミックレンジを広くとりすぎて、正弦波が少し歪んでしまったようですが、このあたりは実使用で許容できるかどうか判断ください。
トランジスタの場合は狙った増幅を行うというよりも、マイコンで処理できる信号レベルまで電圧増幅する目的で導入するケースが多いと思いますので、この程度の設計で十分使用可能だと思います。
次回は、同じ方法で電流帰還バイアス回路を設計します。

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