電子回路

フォトカプラの使い方:確実にスイッチングさせるには

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1        フォトカプラとは

一般的には絶縁する回路間で信号を伝達するときに使われる素子ですが、いつも絶縁されている回路間だけでなく、電気的には接続されていてもアースが異なるため簡単に信号を伝達できない場合にも多く使われます。

1次側のLEDに電流を流すと、LEDの発光によって2次側のフォトトランジスタに電流が流れ(スイッチング動作)、信号が伝達されます。

1-2次間は光学的に結合していますが、1-2次間で電気信号は流れません。

図 1 フォトカプラ基本回路

 

用途は、具体的には以下のものです。

  • スイッチング電源の帰還信号
  • マイコンから、充電部の回路へ信号を送ったり、受信したりする
  • 低速シリアル信号での絶縁

2        設計時の基本

実に、面倒なのですが、量産設計における設計の基準は下記の通りとなります。

フォトカプラの仕様には電流伝達率(CTR)というものがあります。

1次側に流した電流(IF)と2次側で流せる電流(Ic)の倍率を示したものです。

設計時に考慮すべき電流伝達率は以下の算式で決まります。

ポイント

IF×(メーカ記載の電流伝達率の最小値)×(コレクタ電流によるCTR比率)×(VCE=1V時のCTR比率)×(温度特性によるCTR比率)×(経年変化によるCTR比率) >Ic

IF :LEDに流す1次側電流、 Ic :フォトトランジスタに流す2次側電流

目安として、トランジスタ側に流せるのは最大でも30mA程度です。

以下に上記の式を順序立てて説明していこうかと思います。

2.1         順電流(IF)で変化する電流伝達比

下のグラフ図 2はSHARPのフォトカプラPC817のカタログに掲載された特性グラフから採ったものですが、これを見るとIFの電流10mAがCTRのピークで、IFに対し3倍以上のIcを流すことが可能であることが分かります。

カタログ値はIF=5mA時のCTRが記載されているので、10mA流した場合は

グラフから読み取ると 280/320= 1.14倍 CTRが高くなります。

逆に2mA、3mAで使用するとCTRは下がってしまいます。

図 2 電流伝達比-順電流特性

このグラフをよく見ると右上にVCE=5Vと書いてあります。

何ですか? VCEが5Vって?

これは「電流伝達は300%だけれども、フォトトランジスタのVCE間は完全にONしきらず、5Vの電圧を持ちますよ」、ってことです。

こんな使い方をする人はほぼいません。

2.2         コレクタ・エミッタ間電圧で変化する電流伝達比

VCEに関連する内容を別の特性グラフ 図 3から確認してみましょう。

VCE=5Vの時、IF=10mAでは、Ic=13mA程度(オレンジの線で示してあります)で、先ほど300%と書かれていた内容と矛盾しますが、このフォトカプラのCTRは50%から600%まで幅広くありますので、先ほどのグラフではCTRが280%のものを使用したとしたら、今回の特性グラフは120%のもので測定したということでしょうか。

毎回、この手の特性グラフの記載方法については悩みます。

VCEの話に戻します。スイッチングとして使うのであれば、VCEはせめて1V以下になって欲しいですよね。

ということは、このグラフに追記した青い線の左側にフォトトランジスタの状態をもって行きたい訳です。そうすると電流の伝達比率は下の表 1のようになります。

なんだかカタログに記載されているCTRより下がってしまいましたね。

CTRはVCE=1Vの時の値を書く方が、使用する人に対して親切だと思うのですが、なぜかどのメーカも同じような記載の仕方をしています。工業会で決まっているのでしょうか。

図 3 光電流-コレクタ・エミッタ間電圧特性

 

表 1 VCEの値とCTR

IF (mA) VCE=1V時 VCE=5V時
Ic CTR Ic CTR
5 mA 5 mA 100% 6mA 120%
10 mA 10 mA 100% 13mA 130%
20 mA 15 mA 75% 24mA 120%
30 mA 20 mA 67% 読み取り不可

 

2.3         周囲温度によって変化する電流伝達比

 

さて、ここまでは、常温で動作させた時の話ですが、フォトカプラの場合は、温度特性を考える必要があります。図 4の 相対電流伝達比-周囲温度特性 を見てください。

周囲温度が高くなると相対的にCTRも低下します。50℃くらいまで使おうと思うと80%位になるのを前提にして考えないといけません。

図 4 相対電流伝達比-周囲温度特性

 

2.1      経年変化によって変化する電流伝達比

経年劣化に対する注意書きPC817の場合、以下の様に記載されています。

  • 経年変化について フォトカプラに使用している赤外発光ダイオードは一般的に通電により発光出力が低下します。 長時間使用の場合は赤外発光ダイオードの出力低下(50%/5 年)を考慮し回路設計願います。

50%ですか

その値についてはいろいろと疑問があります。LEDに連続して電流を流し続けるとCTRは低下しますが、その電流値と通電時間による変化をグラフで開示してくれているメーカもあります。電流が5mA程度であれば低下は20%以下というのが、私の感覚です。詳しい資料はメーカに問い合わせると出てくるかもしれません。

 

3        まとめ

以上から、設計時に考慮すべき電流伝達値を算出しましょう。冒頭に記載した式をもう一度書きます。

IF×(メーカ記載の電流伝達率の最小値)×(コレクタ電流によるCTR比率)×(VCE=1V時のCTR比率)×(温度特性によるCTR比率)×(経年変化によるCTR比率) >Ic

これを実際のフォトカプラの設計に当てはめてみましょう。

図 1のフォトカプラ基本回路の回路で、V2を5V、R2を500Ωとし、Icを10mA、使用温度の最大値を50℃ としましょう。

  • コレクタ電流によるCTR比率  320/280=1.14 (図 2参照)
  • VCE=1V時のCTR比率         100/130=0.77 (表 1参照)
  • 温度特性によるCTR比率         0.8 (図 4参照)
    IF=10mA時のグラフがありませんが、だいたいこんなもんです。
  • 経年変化によるCTR比率)        0.5

フォトカプラPC817にはA~Dの4つのCTRランクがあり、IFが5mAときのCTRが記載されています。 それぞれの値は下記です。

ランクA   80~160

ランクB  130~260

ランクC  200~400

ランクD  300~600

Cランクを使うとします。CランクのCTRの最低値は200なので①から④までの倍率を掛けて

200×1.14×0.77×0.8×0.5=70

どうですか当初のCTR 200が70になってしまいました。

ということは、2次側に10mA流そうとすると 1次側に10mA/0.7=14m流さないと信頼性の高い回路が構成できないことになります。

そうすると図 1の抵抗R1の値は 電圧V1が5Vとすると

5V/14mA=357Ω

E6系列の抵抗を使うと330Ωを使う必要があります。

フォトカプラはランク指定しないでフルランクで設計する人がいますが、お勧めしません。カタログ記載のCTRが50%のものでは今回のケースでは17.5%ですよ。

私は必ず CTRの下限が200程度のものを使っています。

 

 

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