ガスミュージアム#1では、ガス事業とガス機器の変遷について記載しましたが、今回はガスの製造プロセスと、原料の変遷、ガスの配給経路についてです。
目次
1 都市ガスの原料
1.1 石炭から作るガス
石炭からつくるガス
わが国のガス事業が発足して以来ほぼ80年の間、 ガスの原料は石炭が主流でした。
石炭は運搬や貯蔵が容易で、この石炭を容器の中で蒸し焼き(乾留)にしてガスを発生
させました。
石炭からつくるガスの製造工程
コークス炉に石炭を入れ、外側から1,000~1,300Cで約一昼夜加熱すると、石炭は乾留されガスが発生し、炉の中にはコークスが残ります。
発生したガスをさらに精製すると、ナフタリンや硫安、コールタールなどの副産物が得られます。
コークスは、製鉄所の高炉で還元剤として使われるものが有名ですが、こちらのものもそのような用途で使われたのでしょうか?
コークス
石炭を炉に入れて高い温度で乾留(かんりゅう・蒸し焼き)させて作ります。
石炭からガスやタール、硫黄などが抜けてコークスができます。
1.2 石油から作るガス
石油からつくるガス
1955年(昭和30) ごろから、 石油が大量にしかも安価に入手できるようになりました。
またそのころからガス使用量も増加し、 その需要に応えるため油ガスが注目され、ガスの原料は石炭から次第に石油系(原油・重油・ナフサ)に変わっていきました。
石油からつくるガスの製造工程
油ガスの製造装置には、 原料が重質油(原油など)の場合、 油を高温で熱分解する方法が用いられます。
また、ガス中の不純物を除去するため、 精製装置が複雑でした。
油ガス発生装置(熱分解式)
この模型は、 1952年(昭和27) 東京ガス千住工場で運転された、 わが国初の油ガス発生装置です。
高温に熱した発生器に原油と水蒸気を送りこみ、 熱分解でガスを発生させます。
油ガス発生装置は、石炭ガス発生装置に比べて設備費が安く、 作業も容易でした。
しかし精製工程は大変複雑なものでした。
1.3 天然ガス
現在の都市ガスの原料は、メタンを主成分とする天然ガスや、海外から輸入している液化天然ガス(LNG)が大半を占めています。
LNGを運ぶ船
液化天然ガス(LNG) 貯槽(地下式)
1970年(昭和45)東京ガスは世界で初めてLNG地下タンクの実用化に成功しました。
地下タンクは外側から順に、地中に埋められた鉄筋コンクリート製の壁、中詰コンクリート、 断熱材のポリウレタンフォーム、 特殊なステンレス薄板 (メンブレン)から構成され、 超低温の液体を大量に貯蔵することができます。
地下タンクは液面が地表下にあるため、 構造的にきわめて安全性が高いものです。
2 都市ガスが各戸に届くまで
LNGを運ぶ船から各戸へ届くまでをイラストで説明
ガスは、各地区にある圧力調整装置を経て、低圧化されて行きます。
横浜市瓦斯局圧力計メーターボックス及び地下ガバナー室換気塔
ガバナーは「整圧器」ともいい、 工場から高い圧力で送出された都市ガスを、家庭で使える圧力に変換して供給するために、各所に設置されています。
地下に設置されたガバナーには、 圧力の変化を記録する用紙の交換がしやすいように地上に圧力記録計を設置しました。
また、ガバナーを点検する際、安全に地下室で作業ができるよう換気塔が設けられました。
右側のボックスと中央の換気塔は、 1936年(昭和11) に現在の横浜市港北区樽町へ設置されており、左側のボックスは、2006年(平成18)までに横浜市港北区綱島西で活用されていました。
ボックスのフタには、1943年(昭和18) まで横浜の街に都市ガスを製造供給をしていた「横浜市瓦斯局」の文字が記されています。