目次
1 安藤祐介の「本のエンドロール」
電子書籍に押されて売り上げが少しずつ落ちて行く本の出版業界にあって、納期に追われ、トラブル対応で毎日夜遅くまで目まぐるしく業務をこなす印刷会社の営業マンが、夢を追いかけ続け、いつしか周囲の同僚にまで影響を及ぼしてゆく物語です。
2019年本屋大賞第11位の作品ですが、この年の大賞・瀬尾まいこの「そして、バトンは渡された」よりも個人的には面白かった小説です。
書籍の中にも書いてありますが、本ができるまでの工程はYou Tubeでも「本のエンドロール」を例として投稿されていますので、視聴しながら、工程一つ一つを書き出してみました。
編集作業
装幀デザイン(そうていでざいん)
本の内容を考慮し、本を全てデザインする。
装幀打ち合わせ(そうていうちあわせ)
担当編集、装幀デザイナー等で本の装幀デザインを決める。
組版(くみはん)
指定どおりに文字や図版等をレイアウトする。
昔は組版職人がひとつずつ活字を拾ってゲラ箱に敷詰めていた。
現在はDTP(ディスクトップパブリッシング)が主流となりパソコン上で版を組めるようになった。
インデザイン(Adobe InDesign)が主流のソフト。内校(うちこう)
指定どおりに文字や図版等が配置・修正されているか確認する。
責了(せきりょう)
編集者が赤字を残し、印刷所が責任を以て校了する。
下版(げはん)
校了データを印刷用に変換し、印刷工場に送付する。
製本工程
面付(めんづけ)
32ページを1枚の紙に刷るため、台紙データに面付する。
丁合(ちょうあい)
印刷された折丁をページ順に並べて確認する。
刷版(さっぱん)
面付データをPS版と呼ばれる版に転写し、これを現像処理する。
小説の中では「本のハンコ」と説明されていた。本文印刷(ほんもんいんさつ)
刷版を印刷機の版胴に取りつけ、1色で印刷する。
抜き取りチェック(ぬきとりちぇっく)
刷り本を抜き取り、検品する。
カバー印刷(かばーいんさつ)
多色機を使いカバーを印刷する。
表面加工(ひょうめんかこう)
印刷物の表面にフィルムを貼り、印刷物を装飾し保護する。
下固め(したがため)
背を糊で仮固めする。
化粧裁断(けしょうさいだん)
仕上がりのサイズにあわせて三方を裁断する。
スピン
しおり紐を取り付ける。
花布(はなぎれ)
背の天と地に装飾用の布を貼り付ける。
表紙くるみ(ひょうしくるみ)
本文と表紙を糊で接着する。
トライオート
カバー・帯を表紙にかけ、売り上げカードやチラシ等を本に挟む。
結束(けっそく)
流通の仕様に準じた冊数と方法で結束する。
2 カツカレー誕生秘話
小説の中で「カツカレー誕生秘話」を印刷工場の親父さんが語るシーンがあったため少し調べてみました。
往年の名選手・巨人の千葉茂が1948年(昭和23年)に、東京・銀座の洋食店『グリルスイス』で、巨人・阪神戦の前、お腹がすいて沢山食べたいし、早くも食べたい、ガツンといっき食べたくいと思いついて、
『カレーライスにカツレツを乗っけてくれ!』と注文したのが始まりとされています。
今でもお店のホームページには「カツカレー発祥の店」と書かれていますし、上述のカツカレー誕生の秘話も掲載されています。
しかし、その30年前の1918年(大正7年)にはすでに浅草(現・台東区浅草)の洋食屋台「河金」が豚カツを載せた丼飯にカレーを掛けて「河金丼」と称して提供したとのことです。
誰もが考えそうな事ですので、結局のところ、カツとカレーが揃った場所では、正式名称はないものの、ちょこちょこ作られていたのかもしれませんね。