タビビトノキはマダガスカル原産でゴクラクチョウカ科タビビトノキ属に分類されます。
面白い名前ですが、英名 "Traveller's Palm (旅人のヤシ)" からの日本語訳です。
名前の由来は2つあります。
「旅人が喉を潤すために、その葉の付け根に溜まった水を飲んで乾きをしのいだ」
というものと、
「扇状に開く葉は正確に東西を向くため、旅人はその姿を見て方角を知った」
というものがあります。
しかし、前者は「水の少ない場所に生えた木からは、水が出ない」こと。
後者は、「葉の扇の開く方角が東西南北でばらばら」ということで、確かな定説ではないということです。
しかし、植物であるタビビトノキさんは、最も日光を受けやすい方角に扇を広げたいでしょうから障害物が何もない平原に一本植えられた時には、おのずと開く方向が決まって来るような気がします。
従って、周りの植物と生存競争をしなくても良い環境であれば、開く方向が決まり、旅人に方角を教えることができるのではと考えています。
しかし、雨の日でもなければ、わざわざタビビトノキを見なくても、太陽を見れば方角が分かる訳で、旅人にとっての実用性はない。
という訳で、「旅人を助けることができない木」 でした。
木にとっては、勝手につけられた名前を勝手に否定されるのは迷惑な話でしょうが・・・・。
タビビトノキはマダガスカル航空のマークにもなっています。
尾翼に描かれているのがそのマーク。
日本には路線を持ってないので、マダガスカルに行くか、パリなどの寄港地で見かける以外お目にかかることは無いでしょうが、それだけ、この木がバオバブと同じくらいマダガスカルを代表する植物だということが分かります。
タビビトノキの種は下の写真のように変わった形をしています。
温室で育てられた木の葉は一枚のきれいな葉ですが、マダガスカルの自然環境で育った葉は、葉にもともとあった切れ込みに沿って裂けています。
マダガスカルはサイクロンの通り道にありますが、強風を受けた時に切れ込みから風が逃げ、葉や幹にダメージを与えない自然の知恵だと言えます。
タビビトノキは観葉植物としても市販されていますが、家の中で育てている限りでは写真のように扇が開く形とはならないようです。