調布市にある深大寺の秘仏元三大師像は2020年4~5月に特別開帳予定でしたが、コロナの影響で10月に延期となり、更に来年の秋、東京国立博物館での特別出陳(他所で開帳することを出開帳と呼ぶのだそうです)となりました。
しかし、この元三大師像は2009年にも25年に一度の開帳と銘打って沢山の人を集めたことがあります。その時、その言葉に乗って出かけた身からすると、欺かれた気がします。
今回の特別開帳とは何だったのでしょうか。
上のチラシは調布市郷土博物館で行われている「元三大師展」のものです。
目次
1 御開帳
前回の御開帳は1025年目の御遠忌(ごえんき:没後長い期間を経て行われる仏事)にあたり、50年に一度の大遠忌(本開帳)の半分の25年目にあたり「中開帳」が行われました。
開帳を行う理由としては、人々の結縁を目的とすることが第一義ですが、堂舎の修復費を賄うために行うこともある。(調布市郷土博物館資料)
という訳で、端的には、お金集め、築150年を経過した元三大師堂(下の写真)の修繕と南岳・白鳳院の建築費用集めのようです。
深大寺に限らず、ここのところの寺社の運営費用は、新型コロナ影響による減収で従前よりも厳しそうです。我が家でも来年のお正月の初詣は、人込みを避けて近所の神社で済ませようと考えています。お正月のお賽銭は期待できそうにありませんね。
2 元三大師(がんさんたいし)
ずっと深大寺の開祖であると思っていましたが、全く違う地方で元三大師の名前を見つけて調べてみました。
元三大師 良源は平安時代に活躍した天台宗の僧です。
生まれは912年 近江の国長浜で、923年には比叡山で修行を始めています。
966年には第18代の天台座主(比叡山延暦寺の住職)となっています。
比叡山中興の祖と呼ばれるほど多くの功績を残しました。
985年正月三日の命日にちなんで元三大師の通称で親しまれています。
生涯年表を見ても深大寺のジの字も出てきません。
ちなみに深大寺の開祖は元三大師から遡ること200年、天平5年(733年)満功上人(まんくうしょうにん)です。
3 深大寺の元三大師像
鎌倉時代の寄木作りの座像で高さが2m近くあります。
前回の御開帳時に見た時には、真黒であった印象があります。
折角なので、来年の東博での御開帳にも行ってこようかと思っています。
元三大師像は元寇の際、異国調伏(祈祷によって異国を倒すこと)の修法の本尊として造像されることが多く行われたようです。
元三大師は頭に2本の角を生やし、両目を大きく見開き、胸のあばらが浮き立つ異様な影像で表現されることがあります。俗に角大師(つのだいし)と呼ばれています。
人々を厄難から救おうと、大きな鏡の前で観念三昧に入り、やがて骨と皮ばかりの鬼の形相になると、その法力で疫病神を退散させました。この時の姿を弟子が写しとったものだと伝えられています。
そんなことから、次第に魔除け信仰の対象となっていきます。
元三大師を祀る寺院として関東では、佐野厄除け大師、川崎大師、青柳大師(前橋市)などが有名です。
他には、本家本元の比叡山延暦寺を筆頭に多数あります。
秋田県男鹿市 真山神社
福島県二本松市 鏡石寺
栃木県日光市 輪王寺
埼玉県川越市 喜多院
東京都台東区寛永寺開山堂
東京都目黒区 瀧泉寺(りゅうせんじ)
岐阜県関市 宗林寺
岐阜県不破郡垂井町 真禅寺
愛知県南知多町 神護寺
滋賀県大津市 西教字
滋賀県大津市 求法寺
滋賀県長浜市 玉泉寺
滋賀県守山市 蓮光院
滋賀県高島市 米井大泉寺
京都市上京区 蘆山寺(ろざんじ)
京都府左京区 三千院
兵庫県香美町 法雲寺
上の看板をみると江戸時代にはお札が大人気だったみたいですね。
4 深大寺
折角なので、深大寺の全体地図も添えておきます。
本堂の写真は以下です。
梵鐘は1376年に作られ、重要文化財です。
5 まとめ
深大寺の元三大師像は、鎌倉時代にその当時のブームに乗っかって造られた像でした。
2mの巨大像であることから、深大寺が当時もこの地域では、重要な寺であったことがわかります。
元三大師が生存していたころに、深大寺と関わったことはありませんでした。