最近の回路の電源には小型高容量のリチウムイオン電池をはじめとした二次電池を使うことが多く、この電池出力に直結する回路の受け側に小型の導電性高分子アルミ電解コンデンサを使う場合、初期の突入電流に気を使います。
突入電流10A位は軽く越してしまいます。
今回、各メーカの導電性高分子タイプのコンデンサのラッシュ電流に関する注意事項を確認し、実際の設計時の参考にしたいと思います。
目次
1 各社の使用上の注意事項に記載されたラッシュ電流
各社の導電性高分子系のコンデンサのデータシートからラッシュ電流に関する注意事項を抽出したものが表 1です。
表をみると、
- 導電性高分子系の中でもハイブリッド系はラッシュ電流に関してはあまり気を使う必要がないことがわかります。
従来のアルミ電解タイプと思って使えます。
- パナソニックが質、量ともに他社を圧倒し、この分野ではリーディングカンパニーです。
表 1 導電性高分子系コンデンサのラッシュ電流に関する制限事項
メーカ | タイプ | 構造 | 突入電流の制限事項 |
パナソニック | 導電性高分子アルミ電解
SP-CAP |
層状ポリマー | 記載なし |
導電性高分子タンタル固体
POSCAP |
巻かれた箔構造 | 急激な充放電による過大なラッシュ電流が流れると、ショートや漏れ電流の増大につながる場合があります。
その場合、高信頼性維持のため保護回路を推奨します。保護回路は、ラッシュ電流値が20 A* を超える場合に適用してください。 |
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導電性⾼分⼦アルミ固体
OS-CON |
巻かれた箔構造 | ESRが極めて小さいため過大なラッシュ電流が流れる可能性があります。ラッシュ電流は10A以下に抑制してください。OS-CONの許容リプル電流値の10倍が、10Aを超える場合は、許容リプル電流の10倍以下になるようにしてください。 | |
導電性高分子ハイブリッド | 液体と導電性ポリマーを組み合わせて巻かれた箔構造 | 充放電について
急激な充放電を頻繁に繰り返すような回路や比較的緩慢であるが頻度の高い充放電が要求される回路には使用しないでください。 このような回路に使用される場合は、充放電条件を必ずご一報ください。なお、ラッシュ電流は100A を超えないようにしてください。 |
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ニチコン | 導電性高分子アルミ固体 | 巻かれた箔構造 | 記載なし |
導電性高分子
ハイブリッド |
液体と導電性ポリマーを組み合わせて巻かれた箔構造 | 記載なし | |
日本ケミコン | 導電性高分子 | 巻かれた箔構造 | ラッシュ電流値が20A を超える場合は信頼性維持のために保護回路を推奨致します。 |
導電性高分子ハイブリッド | 液体と導電性ポリマーを組み合わせて巻かれた箔構造 | 記載なし | |
ルビコン | 導電性高分子ハイブリッド | 液体と導電性ポリマーを組み合わせて巻かれた箔構造 | 記載なし |
2 導電性⾼分⼦アルミ固体と導電性高分子ハイブリッドの違い
さて、この項はパナソニックの資料を使って比較します。
下記図をみると、基本構造は電解質の違い(もっともそこが大きいのですが)以外は差異がありません。
相対比較すると表 2のようになります。
表 2 導電性高分子アルミ固体とハイブリッドの違い
種類 | 耐電圧 | ESR |
導電性⾼分⼦アルミ固体 | 低い | 低い |
導電性高分子ハイブリッド | 高い | 高い |
ちなみにOS-CONはパナソニックの導電性⾼分⼦アルミ固体のブランドネームで、もともと今は無き三洋電機が開発したものです。
「定格電圧vs静電容量」「ESR vs静電容量」を見る限りでは、他の導電性⾼分⼦タイプはOS-CONの領域内にあり、OS-CONがメインであることが分かります。
3 導電性⾼分⼦アルミ固体タイプ100μF/25Vを比較
では、導電性⾼分⼦アルミ固体タイプにおいて、特定の容量と電圧のコンデンサで比較することによって、各社の特徴を見てみましょう。
表 3 導電性高分子アルミ固体コンデンサ100μ/25V比較
メーカ | ニチコン | 日本ケミコン |
シリーズ | PCR | PXG |
使用温度max | 125℃/4000hr | 105℃/15000hr |
容量/電圧 | 100μF/25V | 100μF/25V |
外形 | φ8×7 | φ8×10 |
ESR | 41mΩ | 24mΩ |
リップル電流 | 1200mArms | 3300mArms |
メーカ | Panasonic | |||
シリーズ | SVT | SVPT | SVF | SVPF |
使用温度max | 125℃/2000hr | 105℃/2000hr | 125℃/1000hr | 105℃/5000hr |
容量/電圧 | 100μF/25V | 100μF/25V | 100μF/25V | 100μF/25V |
外形 | φ8×6.9 | φ8×6.9 | φ8×7 | φ8×7 |
ESR | 24mΩ | 24mΩ | 24mΩ | 24mΩ |
リップル電流 | 1010 mArms | 3200 mArms | 1010mArms | 3200mArms |
- 繰り返しますがパナソニックは、充実したラインナップがあります。
- ニチコンはパナソニックに比べESRが高いようです。
- 日本ケミコンは高容量で25V以上の物がほとんどありません。今回選択したシリーズは寿命が15000hrもあり、どう考えても特殊品です。
現時点で選ぶとするとパナソニックですが、コストでパナソニック以外のメーカを選ぶ選択肢もあります。この場合は、形状と性能(ESRの違いがどれだけ影響するかは図面を書いた時点では分かりませんが・・)と相談です。