『天外者』(てんがらもん)は、2020年12月11日に公開された日本映画です。
公開前の2020年7月18日に亡くなった三浦春馬の最後の主演映画です。
ポスターを見るにつけ「なぜ」と思うのと同時に、とても惜しいと感じるのは私だけではないと思います。
今回、この映画を見る機会を得ました。
鑑賞のあとに、監督の田中光敏さんのトークショーがあったので、その様子を報告します。
この作品は、幕末から明治にかけて大阪で活躍した五代友厚を描いたものです。
タイトルの「てんがらもん」は、監督によると鹿児島の方言で「とんでもない才能の持ち主」で、子どもに向かって言う時は「天から授かったもの」という意味ということです。
撮影は2018年に始まる予定でしたが、準備が整わず、三浦春馬やその他のキャストに1年待ってもらったそうです。
その一年間、時代劇の初主役となった二浦春馬は座長として、五代の理解を深め、殺陣の練習も真摯に取り組んできたとのことで、彼のまじめさが表れていますね。
監督と二人で行った焼き肉屋での話も聞きましたが、本当にピュアで汚れが無い役者であったとのことでした。
一年後の2019年中に撮影は終了し、2020年中に公開予定でしたが、新型コロナウイルスの流行によって映画館が一時閉鎖されたり、入場制限されたりし、加えて、主演の三浦春馬が急逝したため、公開が2020年12月11日まで延びてしまいました。
映画のシーンで、五代友厚が、坂本龍馬(三浦翔平)、岩崎弥太郎(西川貴教)、伊藤博文(森永悠希)と和気藹々と、牛鍋をつついているシーンがあります。
このシーンは京都で撮影していましたが、実際に撮影後4人で、市内の牛鍋屋に鍋をつつきに行ったとのことで、撮影現場では本当に映画さながら雰囲気は良かったようです。
五代が、父親の危篤を聞いて、鹿児島の実家に帰るシーンがあります。
死に目は間に合いませんでしたが、五代帰郷のうわさを聞いて、五代の命を狙う薩摩武士が家に雪崩れ込んできます。
明治維新で、侍の地位が低下し、こんなはずではなかったと思っている不満分子たちです。
最初の脚本では、そこで切りあいになる予定でしたが、三浦春馬が五代に切りあいをさせたくないということで、彼と役者の田上晃吉が監督に、二人で考えたシーンを実演提案し、監督も納得し、髷を切るシーンに変更したそうです。
現場での撮影シーンは、監督にもよりますが、監督の指示が絶対ではなく、ある程度、ストーリーを変えない範囲で役者の提案も受け入れられるということが分かりました。
監督の心に残るシーンは最後の方の大阪商法会議所初代会頭となった五代が、大阪商人たちの前で大演説を打つシーンということです。
確かにここが物語の一番の見せ場となっています。
五代の演説は、史実では寺だったそうですが、どうしても臨場感を出したくて講堂にしたそうです。
ちなみにこの講堂のシーンでは、後方に吉村大阪府知事と、松井大阪市長の大阪維新コンビが大阪商人として出演していました。(出演についてはネットを見ると賛否両論ですね。)
五代が亡くなったシーンからは、大阪の人たちがその死を悼んでお通夜に大挙して参列しますが、春馬さんの状況と重なったのでしょうか、隣に座ったおばさんの鼻をすする音が激しくなりました。
映画の小道具も展示されていました。
帽子:撮影で三浦春馬が使った帽子です。
主が、もうこの世にいないと思うと、少し悲しくなりました。
万華鏡と工具
伊藤博文役の森永悠希が、通りでこの万華鏡を見ている時に、追手に追われた五代がぶつかり、万華鏡は壊れてしまいました。
後に、街で五代と伊藤が偶然出会い、伊藤に高価なお金で買ったものを壊されたととがめられた時に、五代が持参している工具を使って修理します。
かんざしと筆
右が、恋人である丸山遊郭(実際にあった長崎の花街)の遊女・はる(森川葵)に五代が贈ったかんざしです。
はるはイギリス人に身受けされ、渡英しますが、後に帰郷し孤独のうちに病没します。
左が、妻の五代豊子(蓮佛 美沙子・れんぶつみさこ)と墨絵を描いた筆です。
三浦春馬の誕生日である4月5日は今年(2022)も全国の映画館でこの作品を上映するそうです。
作品の主人公・五代友厚は49歳で亡くなりますが、遺産は殆ど無く、借金だけであったということです。
私財を大阪のために使ってしまった清廉潔白な人柄を示す史実です。
五代友厚、三浦春馬ともにこの作品で語り継がれていってほしいものです。