電気製品の完成品試験では、必ずその製品から発生する電磁界強度の測定をします。
これが機器からの放射エミッション測定です。
放射エミッションは、その製品から発生する電磁界によって、他の通信機器や製品の動作に影響を与えないかどうか確認するためのものです。
放射エミッション対策として、まず思いつくのが、フェライトを使ったチョークコイルや配線にフェライトを巻き付けてそこで、放出される磁界エネルギーを吸収する方法です。
それでもうまくいかない場合で、回路が金属で遮蔽されていない場合は、金属遮蔽は製品の構造を大きく変える恐れがあるものの有効です。
目次
1 金属の遮蔽効果
電圧が高く、電流が少ない時のノイズ源近傍は電界ノイズが支配的です。
逆に電圧が低く、電流が大きいときは磁界ノイズが支配的と言われています。
上記の2つの違いで対策方法(遮蔽する金属素材)が異なるかと言うと、厳密には違うのかもしれませんが、同じことをやってきました。
製品対策の場合は回路の配置や、製品の構造に左右される方が大きいです。
遮蔽の原理は以下の2つです。
1.1 吸収
電磁波を熱に変えてしまいます。
これは、フェライトと同じで、磁界が遮蔽物の金属に鎖交することによって、金属内部に渦電流が発生してエネルギーを消費してしまうものです。
鉄やステンレスと言った透磁率の高い材料は吸収性に優れています。
1.2 反射
電磁波は金属表面で反射させて内部に戻り多重反射します。
銅やアルミは反射性能に優れています。
導波管の材質に銅、アルミが使用されている理由もそこにあります。
同軸ケーブルのシ-ルド材に銅線編組やアルミ箔が使われているのは外来ノイズを反射させるためです。
感覚的には、吸収の方がよりよく遮蔽できそうですが、反射させた方が、減衰率が高いので、銅やアルミの遮蔽は意外と有効です。
しかし、圧倒的に板金の値段が安いので大抵はそちらの方で決着させることが多いです。
1 放射エミッションの規格
ここで、記事の対象としている放射エミッションの規格を書いておきます。
下図は米国の規格で測定距離10m時の限度値(準先頭値)の上限を表したものです。
FCC ClassB(住宅環境における機器のエミッション規格)=欧州のEN61000-6-3
FCC ClassA(工業環境における機器のエミッション規格)=欧州のEN61000-6-4
この規格は欧州規格にも取り込まれているため、国際的にはこのFCC規格がグローバルスタンダードです。
ClassBは住宅地域での使用を目的としたもので、工業環境で使用される機器を対象とするClassAよりも10dB厳しくなっています。どちらのClassも220MHz以上の周波数では7dBμV/m緩和されています。
試験の方法は下図のイメージで、被試験装置から放射された電磁波が、直接または大地面で反射されてアンテナに飛び込んだ時の強度を測定します。
このため、電界強度は
直接波と反射波の位相が同位相であれば高くなり、逆位相だと低くなります。
正式には屋外のオープンサイトで測定しますが、外乱の影響を受けない場所は山奥になってしまうため、電波吸収帯を張り巡らせた電波無響室を使う方が多いです。